(3) 吊り下げるのに不都合な鈕

☆縁が尖っていて大きい穴は太く固いものを通す孔

ものを吊り下げるには丸い断面の取っ手を用いるのが自然の姿である(右図)。 鈕は何故このような薄くて大きな穴が設けられたのだろうか(下図)。 そのヒントは毎日の洗濯物を吊るす物干し竿にある。 あるいは洋服ダンスの天井部にあるステンレス製のパイプを思い浮かべていただけばよい。 そこには円の4分の3、つまり270度の弧を持つハンガーの取っ手が掛けられている。 すなわち太くて固い棒を大きい穴の取っ手に通すと、紐でぶら下げるのとは違って動きにくく安定するのである。 ねじれにくくなるのと、摩擦係数が大きくなるためである。 従って銅鐸というものはブラブラと揺らすものではなく、なるべく固定的に吊るして、外から打ち鳴らすべき性質のものと見る必然性がある。 クリックすると拡大画像を見られます
吊り下げ型の青銅器
(三星堆出土)
これをほぼ確信させる材料が実は銅鐸出土地にはふんだんにある。 ズバリ!竹とみてよい。 当然のことながらいろんな太さがある。 そのために鈕には大き目の穴が開けられている。 ステンレスパイプの役目を果たすのが、天然のパイプ=竹に他ならない。
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(桜ヶ丘6号銅鐸)
これなら鈕の表面が硬く鈕縁が尖っていても簡単に凹んだり折れたりはしない。 太さがほぼ一定していて枝が無いので鈕孔に通すのに打って付けだ。 そして叩くのは適当な太さの木の棒で、その辺にある生木の枝が即有効に活用される。 竹と違って中空ではなく、生の木質がずっしりと詰まっているから打つと当然運動エネルギーも大きく、大きな音を発生させるパワーがある。

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