(6) 「埋納」論から生まれた珍説

☆根拠のない銅鐸礼拝図

銅鐸の資料館等へ行くと必ず展示されている一つの絵が右図に示すような、 机の上に置かれた銅鐸を前に人々が膝まづいて祈りを捧げる場面である。 それが済むと、その銅鐸を木枠や稲藁に丁重に包んで人々が行列し、 山の斜面に埋めに行くというものだ。 このような主観的銅鐸論が専門家から一方的に広められている状況を残念に思う。 銅鐸に祈りを捧げる人々
銅鐸に祈りを捧げる人々
世の中にはいろんなことを考える人がいるものだとつくづく考えさせられる。 主な珍説を拾うと次のようなものがある。

銅鐸ご神体説
銅鐸の下方に開放した穴(空洞)を神=大国主命(もとは大穴持命)のご神体と考えた。

祖霊祭器説
銅鐸を神山の方に向けて埋め、その大穴に神山に宿る祖先の霊魂を呼び込んで祭ったのだという。

タイムカプセル説
現代人が未来人のためにタイムカプセルを遺そうとしているように、銅鐸の文様は彼等の史書であり、 生活記録であり、タイムカプセルだったのではないかという。

銅鐸インゴット説
銅鐸は銅剣を作るためのインゴットという。 弥生時代の銅剣の品質管理法は破壊試験法しかなかった。 銅剣を曲げたり叩いたりして強度を調べる方法を避けるために中間製造物として銅鐸を作り、 その音の周波数を耳で感知して青銅成分の妥当性を判断したというのだ。 物事をシンプルに捉えることの大切さを度忘れすると、こういう珍説となる。 銅剣を鋳造するより遥かに高難度の銅鐸を、しかも大小様々、 複雑な文様のものをインゴットとして作るとの主客転倒の論理を受け入れろと言われても、 無理な注文ではないか。原材料の一部から銅剣一本をサンプルとして作って製品テストをすればよい話だ。

彼岸の中日測定器説
前後左右の4つの身の双孔からのぞいて夏至・冬至に合わせて銅鐸を固定しておけば、彼岸の中日が自動的に測定できる原理だという。 この青銅器鋳造の高度なノウハウの孔をのぞき穴にされてはたまらない。

湯沸器説
湯を沸かすためなら簡単な方法がたくさんある。 超難度のテクニックが効率の悪い湯沸器に転用された理由が示されていない。

この他に、銅鐸は第五世代のコンピュータ説などがある。

『銅鐸民族の謎』より